野鳥の世界

スズメのヒナ

ニワトリのつみれちゃんに餌をやるのが、私の日課となっています。

先日の朝、つみれちゃんに餌をあげに行った時の事です。

つみれちゃん以外の鳥の声が耳に入ってきました。

鳥の声はいつもするはずですが、その日はやけに耳につく声でした。

餌をやり終えた後、山門(お寺の入り口の門)の方に向かう途中に、一羽のスズメのヒナが地面にいました。どうやらこのヒナの声だったようです。

結構な勢いで鳴いているので、心配になったのですが、私はとりあえずその場を離れました。

というのも、随分昔になりますが、私は学生の頃に同様の経験があったからです。

野鳥の保護

その昔、私は路上にいた一羽のスズメのヒナを見つけました。

全然飛べるような様子もなく、近くには野良猫の姿も見えたので、心配になりました。

そこでそのヒナを拾い、動物病院に連れて行きました。

そして先生にまずこのように聞かれました。

「近くに親鳥の姿は見えなかったですか?」と。

実はこの時に知ったのですが、スズメなどの野鳥のヒナがこうして巣から落ちることは珍しいことでもないようです。

ちょうど飛ぶ練習をする頃に、上手に飛べない鳥が地面に落ちてくることがあります。

近くに親鳥がいることもあるそうです。ただし、人間が近くにいたら親鳥も近づけません。

そうしてこちらが善意のつもりで助けようとしたヒナが、実は親鳥から引き離されているというケースも少なくないことを知りました。

とりあえず、親鳥がいることも考えて、元に場所に戻すように、心配なら木の上に戻すように言われました。

そして一応の処置はしてもらいましたが、残念ながらそのヒナは、その後すぐ死んでしまいました。

先生は私に「野鳥の保護をしようとする気持ちは大事だからね」とも言ってくれました。落ち込む私にとってはその言葉はとても有り難いものでした。私もそういう気持ちは大事だと思います。

しかし同時に、善意のつもりでやったことが、決して善ではないこともよくわかりました。本当によくわかりました。

確かに悪いことではないと信じたいのですが、それが善とも言えません。

その後、気になって自分なりに調べました。

野生の生き物は人が捕まえることでショックを起こして死んでしまうこともがあることや、基本的には、保護目的であっても捕まえないのが原則だということも知りました。

鳥獣保護法があり、野鳥を許可なく捕まえたり、飼育することは法律で禁止されていることも知りました。

その場の視点だけではなく、自然全体の視点として、いろんな角度から考えられていることも知りました。

私は知らないことがたくさんあることを知りました。

そして知らないが故に、善ではないことを善だと思い込んでいたことも知りました。

野鳥の世界

そんなこともあって、今回は、スズメのヒナを遠くから見守っていたわけです。

遠くで見ていると、やはり親鳥がいました。餌をそのヒナの口元に運んでいました。

ですが、やはり飛べないヒナ。心配です。でもここで手を出すのも、やはり違います。

結局、しばらく様子を見た後、私は屋内へ入りました。

しかしその時です。スズメのけたたましい鳴き声が聞こえました。

そこにはカラスがいました。

まさかと思ってよく見てみると、口に何かくわえています。おそらくヒナなのでしょう。

親鳥を含むスズメ達は、カラスの周辺を飛び交って威嚇のような声をだしていましたが、カラスがくわえているものを離すことはありませんでした。

逃げるカラスを親鳥たちは必至で追っかけていきました。

私の感情はとても複雑でした。

ヒナが食べられたのもショックでした。

何かできたかもしれない。

何かすることで、親と引き離してしまう所だった。

それでも何かできたかもしれない。

いやいや、自分の選択は間違っていなかった。

それでも、こんな結果なんて……。

やはり何か……。でも違う。

何が善で何が悪なのかなんて、私には決められません。

よく考えてみれば、カラスだって、その時期、子育ての真っ最中ということも知っています。

野鳥と言うのであれば、スズメにだけ肩入れするのもおかしい話です。

スズメを助ければ、間違いなくカラスにとっての悪者、野鳥の行動を害する存在です。

人間の善悪で、野鳥の世界を決めるというのも、なんだか違う気がします。

本当に何が善で何が悪なのかなんて、私には分かりません。善悪になんて分けられません。

でもずっと考えなくてはいけない事なのだと、心のどこかから訴えかけてきます。

野鳥の世界、自然界の姿とはこういうことなのかもしれません。