春は花 夏ほととぎす 秋は月
冬雪きえで すずしかりけり
~道元禅師和歌集~
エピソード(増一阿含経巻第14-4)
ある時、祇園精舎にて、弟子の一人がお釈迦さんに尋ねました。
「この世の中には、ひょっとしたら常に有り続けて、 変わらないものがあるのではないでしょうか?」
「この世に、永遠に変わらないものなどありませんよ」
そう言うと、お釈迦さんは爪の上に、ほんの少しだけ土をのせました。
「たったこれっぽっちの物でも、この世に永遠に変わらないものなどありません。
もし、この爪にのせたほんの少しの土でも、永遠に変わらないものがあるとしたら、私の教える道によって、苦しみを解決することはできないでしょう。
たったこれっぽっちの物といえど、この世に、常なるものはありません。
即ち、無常だからこそ、私の教える道によって、苦しみを解決することができるのです」
メッセージ
あらゆるものは変わりゆく。 この世に常なるものは無し。 これを諸行無常(しょぎょうむじょう)と言います。常に無いと書いて無常ですね。
例えば、川辺に立ち並ぶ木々も。春や夏や秋や冬と、変化に富んだ姿を見せます。
例えばどれだけ小さなものも。原子や元素や電子に微粒子、変わりゆく波のような性質を持ちます。
例えばどれほど大きなものも。山や海、地球や宇宙も。常に変化し続けています。
この世界のあらゆるものが、 変わりゆく。 それは、この世のあらゆるものが 教えてくれます。
それに例外はありません。 それがたとえ人であろうとも。
ただそういわれると、人は失うことばかり考えてしまいます。無常だからこそ、失う苦しみを味わうと。
確かにその側面も間違いではありません。
しかしまた、無常だからこそ、 私達は苦しみを抱えても、解決することができるわけです。 そして、無常だからこそ、そうやって成長していくこともできるわけです。
無常という言葉は、私達にとっては良くも悪くも映ります。
しかし、無常という言葉が示すのは、 ただ、あらゆるものが教えてくれることだけ。
あらゆるもののあり方、 そのまんまを表しているだけなのではないでしょうか。