お経はその成り立ちから、お釈迦さんの説法の内容はもちろん、「どの場所で」ということについても、述べられています。そのため、お経(特に初期)には、当時の国名や地名がよく出てきます。
ここでは、お釈迦さんが生きていた時代のインドの地理を紹介します。
四角で囲まれた地域が、お釈迦さんが生涯の中で、主に活動した場所となります。四角の横幅が実際には、約600km、東京~岡山間の距離です。
現在のインドは、南アジアの半島部分全てを含む、広大な面積を誇る国ですが、古代インドでは、ガンジス川流域に、約16の国があったと言われています。
地図上の国は、経典でよく、その名が見られますが、中でもコーサラ国とマガダ国は、特に力を持った国でした。
カーシー国は、お釈迦さんが生まれる以前は、最大の勢力を持った国だったと言われています。
四大聖地
お釈迦さんの生涯において、特に重要な出来事があった四つの場所を「四大聖地」と呼びます。
①ルンビニ(地図 北部)
お釈迦さん、 誕生の地。ネパール南部タラーイ地方に位置します。
1986年、アショーカ王建立の石柱が発見されました。そこに刻まれた文字により、ここがお釈迦さんの誕生の地であることが確認されています。
②ブッダガヤ(地図 南東部)
お釈迦さんが菩提樹の下、 悟りを開いた地。ネーランジャラー河(現在のパルク河)が、この傍を流れています。
現在、52メートルの大きな塔、マハーボーディ寺院が建っています。
③サールナート(地図 中央南西部)
お釈迦さんが 初めて法が伝わった(初転法輪)の地。漢名では、「鹿野苑」(ろくやおん)と呼ばれます。
かつて苦行生活を共にしていた仲間を訪ね、ブッダガヤから約300km離れたこの地までやってきて、説法を行いました。
④クシナガラ(地図 中央北東部)
お釈迦さんが 亡くなった(入滅)場所。80歳の時に、沙羅双樹の下で亡くなったと言われています。
「あらゆるものは変わりゆき、この世に常なるものは無い。 怠ることなく落ち着いて、修行に精進してください」
経典によれば、これがお釈迦さんの最期の言葉となっています。
その他の地
⑤カピラヴァスツ(地図 北部)
お釈迦さんの 故郷。 釈迦族による部族国家の中心の町です。
カピラヴァスツの場所には、二説あります。
- ルンビニから約24km離れた場所、現在ネパール領ティラウコット。
- ルンビニから約15km離れた場所、現在インド領ピプラーワー。
お釈迦さんの晩年に、故郷である釈迦族の国は、コーサラ国によって滅ぼされたと言われています。
⑥シラーヴァスティ(地図 北西部)
コーサラ国の首都。漢名では「 舎衛城」(しゃえじょう)と呼びます。
有名な「 祇園精舎」(ぎおんしょうじゃ)は、この地にありました。お釈迦さんによって、 多くの説法がこの地で行われました。
⑦ウルヴェーラ(地図 南東部)
ウルヴェーラは、漢名で「苦行林」と呼ばれています。その名からもわかるように、お釈迦さんが 苦行を行った場所だとされています。
⑧ヴァーラーナシー(地図 中央南西部)
⑨ナーランダー(地図 南東部)
お釈迦さんが 最後に旅をした際、立ち寄った場所。5世紀頃~12世紀頃は、仏教教学の一大中心地として栄えました。三蔵法師として有名な玄奘も、ここで学んだと言われています。
⑩ラージャグリハ(地図 南東部)
マガダ国の首都。漢名で「 王舎城」(おうしゃじょう)と呼びます。
当時ここは、マガダ最大の都として、文化的にも経済的にも栄えていました。
最初の仏教寺院である「竹林精舎」(ちくりんしょうじゃ)は、この地にありました。お釈迦さんが 最も多く居た場所と言われています。
⑪霊鷲山(地図 南東部)
「りょうじゅせん」と読み、霊鷲の鷲は、禿鷲を意味します。霊鷲山の山頂は、わずかに平らになっており、その山頂の形がその名の由来とされています。
霊鷲山を含む五つの山が、ラージャグリハを囲むようにそびえています。
お釈迦さんの説法の場の一つとして知られています。